【文/Discover Taipei】
エネルギーも消耗せず、排気ガスも排出せず、両足の力だけで爽快に前に進む自転車が、台北で一大ムーブメントを巻き起こしています。単なる交通手段としてだけでなく、エコライフの実践にもつながり、都市が持つ醍醐味を探る旅には最適です。
2016 ベロシティ・グローバル 台北で開催
世界の自転車の環境を取り巻く環境の整備や政策などについて討論する年に1度の国際自転車会議「ベロシティ・グローバル」。1980年にドイツで初めて開催され、1983 以降はヨーロッパ自転車連盟(ECF)によって、ロンドン、バルセロナ、パリ、ダブリン、ミュンヘン、ブリュッセル、コペンハーゲンなどの都市で開催されてきました。世界各地から専門家を招いて開催される世界最大規模の国際自転車会議です。
ヨーロッパ自転車連盟は、経済的で環境にやさしい自転車旅行を積極的に推進しています。2010年からは、奇数年はヨーロッパの都市で、偶数年はヨーロッパ以外の都市でこの盛大なイベントを開催しています。2013年に円満に幕を閉じたオーストリアのウィーンでの国際自転車会議には、世界50数ヶ国から、1,000名を超える産学界の代表が列席しました。
この国際自転車会議は、これまでアジアの都市で開催されたことはありませんでした。しかしこの度、韓国のチャンウォン、中国、インドの都市を破って、台北市が2016年の開催誘致に成功したのです。これは積極的に自転車の利用を推進し、レンタサイクルサービス「YouBike」を展開してきた台北市の成果が認められた証であり、台北市のアピールと自転車産業にも大きな影響を与えることでしょう。
世界で好評を博す台湾という自転車ブランド
アジアで初めて国際自転車会議の開催都市となった台北市の実力は、短期間で発揮されたわけではありません。台湾の自転車産業の歴史は40年以上もあり、ジャイアント・マニュファクチャリング社、マキシス社(MAXXIS)、 メリダ・インダストリー社などの世界的に有名なメーカーは、最適化されたサプライチェーンを有しています。台湾国内の出荷量こそ少ないものの、自転車の本体と部品を合わせた生産額は1,000億元(約3,000億円)を超え、世界各国に高級自転車と部品を供給しています。自転車本体の輸出比率は9割を超え、世界で最大の高級自転車の輸出国になっています。例えばアメリカの輸入自転車の実に4分の3が台湾製です。また、ツール・ド・フランスの過去2回のレースで優勝した選手のレース用自転車が、台湾で製造されたものでした。
「自転車と言えば台湾」と言われるほど、台湾の自転車は品質と実力で世界にその名をとどろかせています。「台北市は自転車の走行に適した環境が整っているだけでなく、レンタサイクル、YouBikeの推進にも成功しているほか、2016年のベロシティ・グローバルの誘致にも成功したことで、台湾の世界での認知度がさらに高まり、世界の自転車ファンに台湾のソフトパワーとハードパワーを見せつけてくれることだろう」と、台灣區自行車輸出業同業公會(台湾自転車輸出同業組合)の羅祥安理事長は語ります。
台湾で巻き起こった自転車運動
台湾の自転車産業の黎明期にはすでに自転車関連のイベントが開催されていました。1988年に初めて開催された「台北國際自行車展覽會」(台北国際サイクルショー)は、自転車本体と部品の見本市です。自転車の見本市としてはアジア最大規模で、今年で26年目を迎えます。また、1978年に始まり、すでに22回開催されている「國際自由車環台公路大賽」(ツール・ド・台湾)は、2006年から台北国際サイクルショーと統合されました。台北市政府(市役所)周辺を走るステージレースが加えられ、より多くの自転車愛好家が、見本市と同時に間近で高水準の世界的な自転車レースを楽しめるようになりました。
著名な旅行ガイドブック『ロンリープラネット』の「2012年旅行者におすすめの国ベスト10」に台湾が選ばれた理由のひとつが、便利な自転車専用道路の普及です。狭くて人が多い台北市での自転車専用道路の敷設は困難を極めましたが、台北市の努力が実り、市街地に自転車専用道路が設けられたことで、歩行者、二輪車、自動車がそれぞれ別々の道を利用できるようになり、交通量が多くても安全を確保できるようになりました。中でも新北市(旧・台北県)まで伸びる「河濱自行車道」(自転車専用道路)では、淡水河、基隆河、新店溪、景美溪(以上、河川)の川沿いの水辺の景色が思う存分楽しめます。
台北の自転車がつづる都市景観
交通量が圧倒的に多い台北市。車の多い街角を風を切って爽快に走るレンタサイクル「YouBike」の目を引くオレンジ色の車体が、まるで五線譜の小さな音符のように、台北の都市景観に軽快なリズムを与えています。
悠遊カード1枚で自由に利用できるYouBikeの成功が、台北で自転車ブームが巻き起こっていることを物語っています。普段自転車に乗らない人だけでなく、台北を訪れた外国人観光客までもが、ちょっと乗ってみたいと思うYouBike。悠遊カードがない外国人や観光客でも、レンタサイクルステーションに設置された端末を操作して、ICカード搭載のクレジットカードで支払い手続きをすれば、都度利用ができます。24時間利用が可能で乗り捨てもできるYouBikeは、台北市民の生活の一部になっているだけでなく、観光客が台北の風情を味わうのにも最適です。
「多くのヨーロッパの主要都市では、自転車が街中を行き来しているのをよく見かけます。スローサイクリングで都市の違った魅力的な風情に触れているんです。YouBikeも同様に台北に『これまでにない観光価値』をもたらしています。自転車をこぐスピードに合わせて台北の風景が、目の前で移り変わるんです。台北という都市の街角の美しさをじっくり味わうのにはちょうどいいです」と台北市政府交通局の王聲威局長は語ります。
2016ベロシティ・グローバルが台北で開催されます。快適な自転車環境、そしてわかりやすいYouBikeの貸し出し手続き。自転車王国の台北を訪れたら、郷に入れば郷に従えで、自転車に乗って風を切りながら、スローサイクリングで都市の趣を楽しみましょう。
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電話:(02)8978-5511、1999 市民ホットラインでYouBikeを選択
http://www.youbike.com.tw
※英文版:‧Velo-city Global 2016 Makes Its Asian Debut in Taipei
【Discover Taipei 2014年05月號】
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