【文/Discover Taipei】
紙は私たちの生活のあらゆる面で重要な役割を果たしていますが、どんな特殊な紙があり、そして台湾の製紙技術はどのように発展してきたのでしょうか。また、自分で紙を作ることは可能なのでしょうか。ここでは紙について見ていきましょう。
竹紙から和紙へ 質感も向上
台湾の製紙産業のはじまりは、竹紙の製造技術が台湾に伝わった鄭成功時代(1661年~1683年)にまでさかのぼります。この竹を原料とした竹紙技術は今も健在で、祭祀でよく使われるお金に見立てた紙「金銀紙」は竹紙の一種です。日本統治時代になると、日本人が新たな製紙技術を台湾に持ち込み、コウゾやガンピの皮が紙の原料として使われるようになりました。繊維が長いコウゾからは、素朴な質感の和紙が、ガンピからは、表面がつるつるの画仙紙が作られます。
日本人はこの技術を台湾に持ち込んだ際に、林が多く水がきれいな南投県の埔里鎮に目を付けました。埔里は水質が良好で鉄の含有量も低かったため、質のいい紙が製造できたのです。逆に水に含まれる不純物が多かったり、紙の製造過程で大量の化学物質を使用したりすると、できあがった紙はもろくて黄ばみやすく、変質しやすくなってしまいます。
戦後になると、台湾では埔里で生産が盛んなマコモダケの皮、台湾南部で生産が盛んなパイナップルの葉、わら、サトウキビの皮、カラムシなど、農作物の皮や葉などを材料にしたさまざまな紙が生産されるようになりました。ただ、紙のきめ細かさは樹皮を使ったものには及ばず、質感も劣っていました。
手作業の製紙工場から博物館へ
台湾の紙の発展史の次は、紙の応用範囲と製造過程を見ていきましょう。外国人なら、長安東路にある樹火紀念紙博物館がオススメです。紙の応用範囲や製造過程が中国語と英語の二ヶ国語で詳しく解説されています。
樹火紀念紙博物館のルーツは、開設者の陳樹火が、1958年に故郷の埔里で創業した手作業がメインの製紙工場「長春棉紙」にあります。日本人と良好な関係を築いていた陳樹火は、なんとか日本の伝統工芸の保存のための取り組みを台湾にも取り入れたいと考えているうちに、いつしか紙博物館を作りたいという想いが芽生えました。その想いは娘の陳瑞惠によってようやく実現され、1995年に台北に紙博物館がオープンしたのです。
開館19周年を迎える樹火紀念紙博物館は、まるで小さな製紙工場のようで、離解機、抄紙機、プレス台、乾燥台など、紙の製造に必要な道具が展示されています。また、常設展や特別展では、紙の発展史や製造技術がわかるほか、紙を使った工芸品やアート、創意工夫などに触れられ、インタラクティブに紙の応用範囲や変化がわかるようになっています。
水を媒体に木の皮が紙に変身
紙の製造の基本は水を媒体にして、植物の繊維を膠着させることですが、それには複雑な工程が必要です。もっとも伝統的でよく見られる工程が「抄紙」で、「手漉紙」とも呼ばれています。前作業として、木材を水に浸したり、蒸したりしますが、主な工程は4段階に分けられます。第1段階が原料を繊維状に分解する「離解」で、この時に色付けもできます。第2段階が紙をすく「抄紙」で、「抄網」「抄簾」と呼ばれる工程に分けられ、前者では木の枠に布を張った道具、後者では竹簾を使います。第3段階が水分を取り除く「プレス」で、すいた紙を何枚も重ね合わせた「紙床」をプレス機にかけて、60%から70%の水分を取り除きます。そして第4段階が紙を乾かす「乾燥」で、80℃に加熱された乾燥機で紙を乾燥させます。この4段階の工程を経て、ようやく紙ができあがるのです。紙の製造工程がわかったら、是非、樹火紀念紙博物館で紙すきの体験をしてみてください。
紙すき体験
1. パルプ液をまんべんなく混ぜ、すき枠をパルプ液につけて3回回し、パルプ液をゆっくりすくい上げます。
2. 吸水紙を3枚重ね、手で軽く押さえます。
3. すき枠を反対にし、雑巾で拭いて水分を取り除きます。
4. 吸水紙を載せて手ではたき、引き続き水分を取り除きます。
5. 出来上がった紙を乾燥台の上に載せます。
6. 四方からまんべんなくブラシをかけます。
7. 3~5分たって紙を取り出したら、手作り紙の出来上がりです。
生活のさまざまな場面で利用される紙
紙には文字を書いたり、絵を印刷したりすることができますが、ほかにも生活のさまざまな場面でその特殊な性質が数多く利用されています。吸水性に優れた紙で作った「コースター」は、冷たい飲み物を入れたコップに結露した水が流れてテーブルがぬれるのを防げます。また、メラミン樹脂で加工された「紙食器」は、絵柄をプリントした紙を表面に圧縮成型できるので、食器の表面に上薬を塗らなくても光沢が保てます。
そしてコーヒーを入れるときに使う「紙フィルター」は、熱に強くて無害な紙で作られていて、ろ過するスピードがコーヒーの風味を損なわないように、製造時に紙フィルターの厚さや目の粗さにきめ細かい配慮がなされています。それから日本料理の「紙鍋」に使う紙には、食品用の防水剤が加えられているため、火に掛けても変形したりスープが漏れたりしないだけでなく、油も吸収するため、健康志向の現代人にピッタリです。
紙の特殊な性質は食器などに利用されているだけではありません。繊維の太さの違いから起こる毛細管現象を利用した「あぶらとり紙」は、顔に当てた際に皮脂を吸い取り、肌につやを与えてくれます。
また、黒鉛を混ぜたボール紙を蜂の巣状に張り合わせ、さらにほかの材質のものを張り合わせた「ハニカム材」は、防火建材として利用されています。黒鉛が熱で膨張して破裂する性質を利用し、破裂した黒鉛が建材の隙間を埋めて空気が通らなくなる構造になっているのです。空気がなければ、延焼もしにくくなるというわけです。
紙は私たちの生活の至る所に存在します。どんな風に利用されていても、工芸品としての角度から見ても、紙にはさまざまな一面があるのです。
関/連/情/報
樹火紀念紙博物館
住所:台北市長安東路2段68号
電話:(02)2507-5535
開館時間:月〜土曜日 09:30〜16:30(日曜日、正月、旧正月、清明節、端午節、中秋節休館)
紙すき体験:10:00、11:00、14:00、15:00
ガイドツアー:土曜日 14:00
http://www.suhopaper.org.tw
※英文版:
‧Exploring the Culture of Taiwan’s Paper Arts
【Discover Taipei 2014年03月號】
This entry passed through the Full-Text RSS service — if this is your content and you're reading it on someone else's site, please read the FAQ at fivefilters.org/content-only/faq.php#publishers.
留言列表